コラム

温泉に入るサル

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世界唯一、温泉に入るサル

各地に野生動物が温泉で傷を癒したとか言う民話や伝説はありますが、どれも神話の域を出ません。しかし、地獄谷のサルたちが温泉に入るのは事実です。しかし、昔からサルたちが温泉に入っていた訳ではありません。
餌づけに成功し、サルたちが野猿公苑にいる時間が多くなると、エサを待つ間ののんびりする時間が出来ます。ある時、何かの偶然か子ザルが野猿公苑のすぐ近くの後楽館の露天風呂に入ることを覚えました。冬の寒いときに温泉に入っていると温かく気持がよかったのでしょう。
徐々に仲間の子ザルや他のサルもつられて温泉に入ることを覚えました。
ヒトの温泉にサルが入っては衛生上好ましくないので野猿公苑内にサル専用の露天風呂を作りました。以来、代々、サルたちの間に温泉に入る行動が受け継がれています。

温泉に入るサルおサルの温泉

地獄谷のサルたちが温泉に入る行動を得たことは、餌づけによってサルたちの生活にゆとりが出来たこと、地獄谷の冬の寒さ、近くに旅館の露天風呂があったこと、いくつかの状況が重なって生まれた極めて特殊な行動なのです。

温泉は寒さをしのぐため

サルたちが温泉に入るのは-10℃を下回る、冬の地獄谷の厳しい寒さをしのぐために身につけた知恵です。ですから、夏の暑い盛りや温暖な時期には入る必要がないので、積極的に温泉には入りません。
温泉に入ることは、サルたちの生活のほんの一部分でしかありません。温泉に入るのが嫌いなサルもいます。温泉に入るのが好きなサルでも、エサを食べること、仲間とのコミュニケーション、の方が大切です。サルたちにとって温泉はなければならないような重要なものでありません。
ヒトのように体の汚れを落とし清潔にすると言った目的もありません。ただ、温泉に入り体が温まると気持ちいがいいのはサルたちも同じ、その表情を見れば一目瞭然です。うとうとと目を閉じ、居眠りをしているサルもいます。雪の激しく降る寒い日には温泉に入るサルも多く、中には何時間も入っているサルもいます。

温泉に入るサル温泉に入るサル

湯冷めはしない

サルたちは寒い冬に温泉から上がっても湯冷めはしません。ヒトは、皮膚の汗腺から汗を出し、その気化熱で体温を調節しているため、湯上りに必要以上に熱を放出してしまうと、体温が急激に下がりすぎて湯冷めをします。サルのように全身を毛に覆われた動物は汗腺が少なく、汗をあまりかかないために、急激な体温変化は起こりにくいのです。更に、寒冷地適応で体の末端の毛細血管が収縮し体温を奪われない機能が発達しています。そのため、サルはヒトと比べると湯冷めをしにくいと言えます。雪の上で裸足で暮らしていても霜焼けにならないのもそのためです。

温泉に入るサル温泉に入るサル